リクガメは二足で立ち上がる

リクガメを飼育していて一番驚いたのは、彼が二足で立ち上がることだった。リクガメは私が考えているよりもずっとアクティブで、岩や植木鉢によじ登ったり飛び降りたりなどの立体動作は平気でこなす。そしてたまに甲羅からひっくり返ってしまって、自分では起き上がれなくなる。うかつに目が離せない。

壁面により掛かるようにして、彼は身を起こす。何だこの程度かとがっかりされたかもしれない。でもまだ本気を出していない。

転落防止と日除けのために、上にはすだれをかけていた。いともたやすく前足で払いのけられてしまった。彼は壁の向こう側のセカイを目指しているようだ。

外に出たがっているようで、切なくなってくる。今度散歩に連れて行こうと思った。

完全に、二本の足で直立している。アルプスの少女もびっくりだろう。その姿にはどこか力強い意志を感じる。

壁を乗り越えそうな勢いなので、慌ててチンゲンサイを見せると、すぐに戻ってきた。このヨツユビリクガメは完全草食性とされる。チンゲンサイやコマツナなどの生野菜のほか、タンポポ、オオバコ、カラスノエンドウ、クズ、猫じゃらしの葉っぱなどの野草を好む。バナナやイチゴやメロンなども大好きだが、果物の上げ過ぎは健康に良くないそうである。タンポポの黄色い花や、シロツメクサ(クローバー)の花も大好物だ。

爪と嘴がだいぶ伸びてきた。来週にでも動物病院に連れて行こうと思っている。リクガメは冬眠をする。けれど飼育下では、室内で冬越しをさせるため、けっこうな暖房代がかかる。餌も、ドッグフードやキャットフードのような万能食が存在しないから、野草の採取や家庭菜園に勤しむ必要がある。それから床材の土も交換しなければ……。

このようにリクガメ飼育はなかなかの手間暇がかかるのだけれど、かわいい。生涯付き合っていきたい生き物だと思った。

(おわり)

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当記事の執筆者
深見クラゲ

研究対象は《消失アメーバ》
本質は消された言葉にこそ宿るとし、文章を徹底的に削る創作手法を好む。
「作者と作品は切り離される。自己消失によって物語は作られる」を信条とする。

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