けものフレンズに学ぶ物語の作り方(第1話考察)

アニメ「けものフレンズ」の脚本から、物語の作り方を学ぶための記事となる。じつは《けもフレ》における物語構成は、SFでもミステリーでもファンタジーでも恋愛でも、あらゆるジャンルに応用可能だ。

脚本の基礎を学ぶための研究教材として、けもフレは優れたアニメといえる。

以下、けもフレ各エピソードの(創作者視点での)考察を行いたい。

ネタバレを多く含むため、未視聴の方はご注意されたし。

第1話「さばんなちほー」と変化の法則

第1話を考察する前に、物語作りに役立つ《変化の法則》を紹介しよう。

【変化の法則】すべての物語は「AはBによってCへと変化する」の構文に当てはめられる。

  • A=悩みや問題を持つ対象(課題)
  • B=新しくもたらされる事件や人物(試練)
  • C=悩みが克服された状態、問題が解決された状態(結果)

すなわち物語は「課題」→「試練」→「結果」の流れを描くことによって、主人公や対象の変化を見せるものと定義付けられる。

※法則に当てはめると「(課題)は(試練)によって(結果)へと変化する」

そして各キャラクターは「課題を示す」「試練を与える」「結果を評する」のいずれかの役割を持つ。

上記の法則をふまえて、けものフレンズ第1話を考える。

「(課題)自分に力がないことに悩んでいたかばんちゃんは、(試練)サーバルちゃんと一緒にセルリアンと戦った体験によって、(結果)自分の強みを活かせるフレンズへと変化する」

  • A(課題)=かばんちゃんは自分が何の動物か分からず、身体能力も低いので駄目な動物だと思い悩む。
  • B(試練)=サーバルちゃんひとりでは対処できない、巨大なセルリアンが登場する。
  • C(結果)=セルリアンとの戦いに打ち勝ち、かばんちゃんは自分の「すっごーい!」ところを発見する。

ちなみに物語を起承転結構成にする場合は、「起」「承」で課題を提示し、「転」で試練を与え、「結」で結果を示すようにシーンを配置する。けものフレンズでもおおよそ起承転結の流れに沿って物語が進む。

起・承「課題の提示」

物語の前半部分では、主人公のかばんちゃんが抱えている課題が浮き彫りにされる。列挙すると次の通り。

  • サーバルちゃんのように、崖から素早く降りることができない
  • サーバルちゃんのように、上手に川を渡れない
  • 小さなセルリアンに襲われて、転けてしまう
  • カバに質問攻めにされ、何もできないのねみたいなことを言われる
  • カバに、自分の身は自分で守りなさい。サーバル任せでは駄目よ。と忠告される

これらのシーンはすべて、「かばんちゃんは身体能力が劣っており、自分に自信が持てない」という課題を表している。そしてカバが「サーバル任せでは駄目」と言ったように、やがては解決しなければならない問題として描写される。

転「試練の付与」

試練とは言ってみれば、主人公が課題を乗り越えて変われるかどうかを確かめるための、テストのこと。

第1話では、サーバルちゃんひとりでは勝てない巨大セルリアンが登場したシーンが、かばんちゃんにとっての試練となる。もしもかばんちゃんが試練をクリアできなければ、ふたりともセルリアンに食べられてバッドエンドとなる。(=主人公には試練に挑まなければならない必然性がある)

試練は唐突に訪れるのではいけない。視聴者に対する不意打ちとなってしまう。したがってけものフレンズでは、これからの試練を予期させる伏線がシーン中に散りばめられている。

具体的に、第1話では試練が訪れる前に下記のような伏線が出ている

  • セルリアンが危険な存在であることの説明
  • セルリアンの出現頻度が増えていることの説明
  • サーバルちゃんの能力では小さなセルリアンを倒すのが精一杯だという情報
  • 「サーバル任せでは駄目」というカバの忠告

これらの情報があって初めて、巨大セルリアンのシーンは試練たり得る。(どれかの情報が書けてしまうと試練が唐突で不自然に見えてしまう。試練の訪れは視聴者に《予期》させなければいけない)

結「結果の評価」

試練を乗り越えたことによって、何がどう変化したのかを明らかにする。第1話では、セルリアンに勝ったことにより、かばんちゃんの環境が次のように変わった。

  • 「サーバルちゃんを助けようとしたのね。おもしろい子」とカバに評価される
  • サーバルちゃんからの「すっごーい!」という評価(長所の発見)
  • かばんちゃんとサーバルちゃんが仲良くなる(サーバルさん→サーバルちゃん/口調の変化)
  • サーバルちゃんは、当初サバンナ地方の案内だけに留めるつもりだったが、かばんちゃんについていくことに決める
  • かばんちゃんは自分に自信を持つようになる(自虐的なことを言わなくなる)

こうした《変化》を効果的にストーリーのなかで描くことができれば、視聴者の心を掴みやすい。

物語は「転」(試練)から考えると作りやすい

第1話のエピソードを作るのであれば「転」のシーンから作っていくのがやさしいと思われる。

まず「サーバルちゃんに助けられてばかりだったかばんちゃんが、今度は自分が助ける側に回らなければならない」という試練を考える。

試練のシーンが思い浮かんだら、次はその結果を考える。つまり、試練によって何がどう変化するか。

  • かばんちゃんが自信をつける
  • かばんちゃんの「すっごーい!」が見つかる
  • かばんちゃんとサーバルちゃんが仲良くなる

そして上の3点が結果であるならば、物語の前半部分では結果と正反対のシーンを描く。そうすることで、より《変化》を強調できる。

すなわち「起」「承」では

  • かばんちゃんは自分のことを駄目な動物だと思っていて、自虐的
  • かばんちゃんはサーバルちゃんよりも身体能力が劣っていて、すごくない
  • かばんちゃんとサーバルちゃんは、最初は仲良くない※

と、試練の結果とは真逆の状態を描くことが重要。これがそのまま主人公の解決すべき《課題》となる。

※補足:ふたりはすぐに仲良くなったように見えるが、そうではない。むしろ初対面の印象は最悪で「食べないで」「食べないよ!」の狩りごっこから始まる。

かばんちゃんは「サーバルさん」とよそよそしい丁寧語で話しかけおり、ふたりには心理的距離がある状態。サーバルちゃんにしても、最初はサバンナ地方の案内をするだけで、ずっと一緒にいる予定ではなかった(作中でもそのように発言している)。

各キャラクターの役割

かばんちゃん(主人公)

【葛藤】自分に力がないことに悩む

【目的】自分が何の動物か知りたい→図書館へ行く

【変化】自分の強みを活かして行動できるようになる/サーバルちゃんとの関係性が深まる

サーバルちゃん(指導者)

【葛藤の付与】運動能力において、かばんちゃんよりもサーバルちゃんの方が優れているところを描写する

【課題の提示】正体を知るためにジャパリパークの図書館に行くことを提案する/サーバルだけでは勝てないセルリアンに襲われる

【変化の促成】フレンズによって得手不得手は違うから、自分の得意なことを見つけていけば良いとかばんちゃんに気づかせる

カバ(協力者)

【葛藤の付与】あなた何にもできないのね、みたいなことを言う

【課題の提示】サーバルちゃんに頼ってばかりではいけないと諭す

セルリアン(敵対者)

【課題の提示】小さなセルリアンに対して、かばんちゃんは何ら抵抗できずに食べられそうになる

【試練の付与】サーバルだけでは勝てない巨大なセルリアンが登場する

このように、各キャラクターは主人公に【課題】を与え、変化を促す役割を持っている。

なお、ラッキービーストとフェネック・アライグマは、次エピソード以降で役割を持つキャラであり、第1話時点では主人公に直接的な影響は与えない。

アニメ
当記事の執筆者
五条ダン

研究対象は《ナメクジオバケ》。「現実は甘くない。だからこそ甘さが必要である」をモットーとする。修辞技法(レトリック)の分析を得意とし、文体に重きを置く創作スタイルを好む。しかし筆速はナメクジの歩みのように遅い。

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